国土交通省令基準に適合する者
建設業の許可を受けるための要件の一つに、「建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること。(建設業法7条1号)」があります。
国土交通省令で定める基準に適合する者とは、建設業法施行規則第7条に記載されていますが、後で詳しく説明しますので、ざっと略して書くと次の3つのいずれかに該当する必要があります。
- 常勤役員等のうち1人が、建設業に関し経営業務の管理責任者等としての経験を有する者であること
- 常勤役員等のうち1人が、2年以上の建設業に関する役員等の経験を有し、かつ、通算5年以上の一定の経験を有する者であって、5年以上の財務管理、労務管理及び業務運営の業務経験者を、当該常勤役員等を直接補佐する者としてそれぞれ置くもの
- 国土交通大臣が1又は2に掲げるものと同等以上の経営体制を有すると認定したもの
上記3.については、かなり特殊な場合で一般的には該当しませんので、説明は省略します。
常勤役員等のうち1人が、建設業に関し経営業務の管理責任者等としての経験を有するものであること
以下、用語の意味から順に説明します。
- ① 常勤役員等
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- 「常勤」とは
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原則として本社、本店等において休日その他勤務を要しない日を除き一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事(テレワークを行う場合を含む。)していることをいいます。
- 「役員」とは
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次の者が該当します
・株式会社であれば、取締役
・指名委員会等設置会社であれば、執行役
・持分会社(合同会社、合名会社、合資会社)であれは、業務を執行する社員
・法人格を有する組合等であれば、理事等
少しややこしいのは、会社法上は取締役の他に会計参与と監査役も役員ですが、建設業法では会計参与と監査役は「役員」に含まれません。
また、会社に執行役員(執行役とは異なります。)を置いている場合がありますが、その会社で役員待遇であったとしても原則として建設業法での「役員」には該当しません。
ただし、取締役、執行役、業務を執行する社員に準ずる地位にあり、建設業の経営業務の執行に関し、取締役会の決議を経て取締役会又は代表取締役から具体的な権限委譲を受けた執行役員等であれば、「役員」に該当します。
なおこの場合、建設業に関する事業の一部のみ分掌する事業部門(例えば、建築部門・土木部門の両方を有する会社において建築部門のみを分掌する場合など一部の営業分野のみを分掌する場合や、資金・資材調達のみを分掌する場合等)の業務執行に係る権限移譲を受けた執行役員等は、「役員」とは判断されませんので注意が必要です。
- 「等」としているのは
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法人でない個人事業の場合のことであり、個人事業主又はその支配人が該当します。
なお、「支配人」とは、個人事業主に代わって、営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をなす権限を有する使用人であって、商業登記されている者をいいます。
- ② 建設業に関し経営業務の管理責任者等としての経験を有する者
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次のいずれかに該当する者(個人)をいいます。
(1)建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
- 「経営業務の管理責任者」は、前で説明した「役員」「等」の他に、支店長、営業所長等の営業取引上対外的に責任を有する地位にあって、経営業務の執行等の建設業の経営業務について総合的に管理した経験を有する者をいいます。
(2)建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者
- 「経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験」とは、取締役会設置会社において取締役会の決議により建設業に係る事業部門に関して業務執行権限の委譲を受ける者として選任され、かつ、取締役会によって定められた業務執行方針に従って、代表取締役の指揮及び命令の下に、具体的な業務執行に専念した経験をいいます。
(3)建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者
- 「経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者」とは、例えば、法人の場合は経営部門の取締役に次ぐ地位(営業部長、総務部長等)にある者、個人事業の場合は個人事業主の専従者(家族従業員)をいいます。
- 「経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験」とは、建設業に関する建設工事の施工に必要とされる資金の調達、技術者及び技能者の配置、下請業者との契約の締結等の経営業務全般について、従事した経験をいいます。
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『(①常勤役員等)のうち1人が、(②建設業に関し経営業務の管理責任者等としての経験を有する者)であること』について、お分かりいただけたでしょうか?
常勤役員等のうち1人が、2年以上の建設業に関する役員等の経験を有し、かつ、通算5年以上の一定の経験を有する者であって、5年以上の財務管理、労務管理及び業務運営の業務経験者を、当該常勤役員等を直接補佐する者としてそれぞれ置くもの
この基準は、上記1.の「建設業に関し経営業務の管理責任者等としての経験」に必要な年数に満たない者でも、それを補佐する者を置くことができればOKというものです。
- ①「2年以上の建設業に関する役員等の経験を有し、かつ、通算5年以上の一定の経験を有する者」
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次のいずれかに該当する者をいいます。
(1)建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者
- 平たく言えば、建設業の財務管理、労務管理又は業務運営のいずれかの業務で、(役員等で2年以上+役員等に次ぐ職制で〇年)の経験合計が5年以上あればよい、ということです。
- 例えば、経営部門の取締役として3年、それ以前に財務管理の役員に次ぐ職制(総務部長等)を2年以上行っていた場合が該当します。
(2)5年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、2年以上役員等として経験を有する者
- 平たく言えば、(建設業の役員等で2年以上+建設業以外の役員等で〇年)の経験合計が5年以上あればよい、ということです。
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- ②「5年以上の財務管理、労務管理及び業務運営の業務経験者」
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建設業の許可を申請するその建設会社で
ⅰ.5年以上の財務管理の経験を有する者
ⅱ.5年以上の労務管理の経験を有する者
ⅲ.5年以上の業務運営の経験を有する者
である必要があります。
(ⅰ.ⅱ.ⅲ.)は、重複が認められますので1人で複数を兼ねることができます。
『(①常勤役員等)のうち1人が、(②2年以上の建設業に関する役員等の経験を有し、かつ、通算5年以上の一定の経験を有する者)であって、(③5年以上の財務管理、労務管理及び業務運営の業務経験者)を、当該常勤役員等を直接補佐する者としてそれぞれ置くもの』について、お分かりいただけたでしょうか?