経営事項審査とは?概要を元建設公務員の行政書士がわかりやすく解説!

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経営事項審査の概要

 建設業許可を受けている建設業者が、国、都道府県、市町村等の公共機関が発注する公共工事を直接請け負おうとするには、各公共機関が実施する資格審査を受ける必要があります。

 この資格審査は、全国統一の基準で審査される「客観的事項の審査」と、発注機関別に独自の基準で審査される「主観的事項の審査」からなっており、各発注機関がこの2つの審査結果を総合して入札参加資格の認定と建設業者の順位付け及び格付けを行います。これを入札参加資格審査といいます。

 入札参加資格審査で建設業者に付けられた格付けによって、入札参加できる公共工事の規模が変わってきます。

 ですので、入札参加資格審査の基の一つとなる「客観的事項の審査」結果は非常に重要な意味を持ちます。 

 この「客観的事項の審査」に相当するのが、「経営事項審査」というものです。

 略して「経審(けいしん)」と呼ばれています。

  なお、”直接請け負おうとする”のに必要、つまり発注機関の競争入札に参加して元請として受注するのに必要な資格審査なので、下請で公共工事に参加するだけであれば、入札参加資格審査はもちろん「経営事項審査」も受ける必要はありません。

経営事項審査申請の手続き等

申請先

 先ほども述べたとおり、経営事項審査は「客観的事項の審査」ですので、どの発注機関が行っても同一の結果となるはずですから、申請先はどこの発注機関でもよいだろうとなるのですが、建設業許可を行った行政機関(「許可行政庁」といいます。)が審査を実施することになっています。

 すなわち、都道府県知事許可の場合は許可した都道府県に、国土交通大臣許可の場合は許可した国土交通省地方整備局等に申請します。

審査結果の有効期間

 経営事項審査の結果の有効期間は、審査結果の通知日から始まり、審査基準日(申請者の直前の決算日)から1年7ヶ月が満了日となっています。

 では、なぜ1年7ヶ月なのか?ですが。

 まず前提として、公共工事の入札に参加し続けるには経営事項審査を毎年受けなければならないという決まりであるということです。

 経営事項審査は、事業年度終了届(決算変更届)を提出した後でなければ申請することができないということがあります。

 事業年度修了届(決算変更届)は、決算日から4ヶ月以内に提出する必要がありますが、経営事項審査にも審査のための期間が当然に必要になります。

 仮に、決算日から4ヶ月で事業年度終了届(決算変更届)を出して、その後、経営事項審査申請書を作成・申請し、経営事項審査結果の通知までに3ヶ月以上かかったたとしましょう。

 そうすれば、前期の決算日から1年7ヶ月以上が経過しているために、新たな経営事項審査結果の通知までの間に空白期間が生じることになります。

 空白期間中は、公共工事を請け負うことができなくなるという不具合が生じます。このため、空白期間を生じさせることのないように1年7ヶ月が設定されてます。

 しかし、この1年7ヶ月は決して余裕のある期間でないことを理解しましょう。

 なお、多くの許可行政庁で、前年に経営事項審査を受けた業者様に、有効期間が切れることのないように次の経営事項審査の受審日時を通知しています。

審査項目と総合評価値(P)

 審査は、申請者の前年度の各種データを元に審査されます。

審査項目

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区  分審 査 項 目
経営規模(X)(X1) ・完成工事高(業種別)
(X2)・自己資本額
・利払前税引前償却前利益の額
経営状況(Y)・負債抵抗力
  純支払利息比率
  負債回転期間
・収益性・効率性
  総資本売上総利益率
  売上高経常利益率
・財務健全性
  自己資本対固定資産比率
  自己資本比率
・絶対的力量
  営業キャッシュ・フロー(絶対額)
  利益剰余金(絶対額)
技術力(Z)・技術職員数(業種別)
・元請完成工事高(業種別)
その他審査項目(社会性等)(W)・建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況
・建設業の営業年数
・防災活動への貢献の状況
・法令遵守の状況
・建設業の経理の状況
・研究開発の状況
・建設機械の保有状況
・国又は国際標準化機構が定めた規格による登録状況

総合評価値(P)

 次の式により算出されます。

 総合評価値(P)=0.25×(X1)+0.15×(X2)+0.20×(Y)+0.25×(Z)+0.15×(W)

経営規模等評価(XZW)の申請と総合評価値(P)の請求

 上の表のうち、経営状況(Y)については、国土交通大臣の登録を受けた登録経営状況分析機関に分析を依頼(有料)することとなっています。

 このため、認可行政庁への経営事項審査申請に先だって、登録経営状況分析機関に分析を申請し、「経営状況分析結果通知書」を受け取る必要があります。

 次に、残る経営規模等評価(XZW)を「経営状況分析結果通知書」(原本)と必要な申請資料とを合わせて、許可行政庁に「経営規模等評価(XZW)の申請」を行います。

 また、同時に「総合評価値(P)の請求」を行うと、経営規模等評価結果通知書・総合評価値通知書」を受け取ることができます。

 入札参加資格申請をする場合、大多数の発注機関で許可行政庁が発行した「総合評価値通知書」の添付を義務づけしていますので、「経営規模等評価(XZW)の申請」のみを行う場面は一般的にはありません。

審査費用等

 経営事項審査を受けるにあたっては、「経営状況分析(Y)の申請」、「経営規模等評価(XZW)の申請」、「総合評価値(P)の請求」のそれぞれについて手数料がかかります。

「経営状況分析(Y)の申請」手数料

 登録経営状況分析機関は現在10社ありますが、結果通知書発行までの日数や電子申請か郵送かなどによって手数料が異なってきます。

 概ね1万円前後から4万円程度に設定されています。

「経営規模等評価(XZW)の申請」手数料

 基本手数料8,500円+(審査を受けようとする業種の数)×2,300円

「総合評価値(P)の請求」手数料

 基本手数料400円+(審査を受けようとする業種の数)×200円

必要経費

 経営事項審査の申請をするにあたっては、上記の金額に証明書等を取得するための費用が必要になります。

 また、行政書士に手続きを依頼される場合は、プラスして行政書士への報酬が必要です。

 まとめ

 経営事項審査は、公共機関が発注する公共工事を直接請け負おうとするには、毎年受ける必要があります。

 申請を忘れたり時機を逸してしまうと、公共工事の入札参加・請負契約ができなくなります。

 忘れずに申請するようにして下さい。

 なお、経営事項審査の申請手続きは、国、都道府県(大阪府と福岡県を除く。)ともに電子申請(建設業許可・経営事項審査電子申請システム:JCIP)で行えるようになりました。

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