在留資格「介護」の概要等
在留資格「介護」は、日本で外国人が介護業務に従事するための在留資格です。
この資格は2017年に新設され、高齢化社会に伴う介護人材不足の解消を目的としています。
なお、介護で就労する場合、インドネシア人、フィリピン人及びベトナム人の方には、在留資格「特定活動(EPA介護福祉士)」または、在留資格「特定活動(EPA介護福祉士候補者)」のルートもあります。
概 要
対象業務
介護福祉士として、介護施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、デイサービス、訪問介護など)や病院での介護または介護の指導を行う業務に従事するための在留資格です。
介護の具体的な業務内容は、要介護者の入浴、食事、排泄の介助、日常生活のサポート、リハビリの補助などを行うこととなります。
雇用形態
フルタイムの正社員として働くことが一般的ですが、パートタイムも可能です。
ただし、就労条件は雇用契約に基づきます。
国家資格「介護福祉士」が必要
2020年4月1日に上陸基準省令が改正され、介護福祉士の資格を取得したルートにかかわらず、在留資格「介護」が認められることとなりました。
これにより、日本人と同様、国家資格「介護福祉士」を取得するには、以下の3つルートから選べるようになりました。
- ① 介護福祉士養成施設ルート
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- 2026年度までに介護福祉士養成施設を卒業した方は、卒業後5年間は介護福祉士の資格取得者とみなされます。
卒業後5年経過以降も介護福祉士の資格を有効にするには、「卒業後5年以内に介護福祉士国家試験に合格」か「卒業後5年間続けて介護などの実務に携わる」のどちらかを満たす必要があります。 - 2027年度以降の介護福祉士養成施設卒業者は、介護福祉士国家試験の合格が必須になります。
- 2026年度までに介護福祉士養成施設を卒業した方は、卒業後5年間は介護福祉士の資格取得者とみなされます。
- ② 福祉系高校ルート
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福祉系高校で、定められた科目・単位を取得し卒業し、介護福祉士国家試験に合格する。
- ③ 実務経験ルート
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「3年以上の実務経験および実務者研修を修了」または、「3年以上の実務経験および介護職員基礎研修・喀痰吸引等研修を修了」のいずれかにより、介護福祉士国家試験の受験資格を得て、介護福祉士国家試験に合格する。
特 徴
メリット
- 在留期間の更新に回数制限がないので、長期的な就労・在留が可能です。
- 家族(配偶者、子供)の帯同も可能となります。
- 長期間安定的な就労実績を積むことにより、在留資格「永住者」の取得条件を満たしやすいといえます。
デメリット
- 必須要件となっている国家資格介護福祉士を取得するまでの道のりが長い。
- 高度な日本語能力が求められます。介護福祉士国家試験は日本語で受験しなければならず、介護現場では高齢者との円滑なコミュニケーションが重要なため、日本語能力試験(JLPT)N2レベル以上が事実上の目安とされています。
在留資格「介護」の要件等
取得の要件
在留資格「介護」を取得するには、以下の要件をすべて満たしている必要があります。
- 国家資格「介護福祉士」を取得していること
- 日本の公私の機関(介護事業所など)と雇用契約を結んでいること
- 日本人が従事する場合と同等以上の報酬を受けること
国家資格「介護福祉士」を取得するには
先にも述べたとおり、国家資格「介護福祉士」を取得するためには、以下のいずれかのルートを経ることになりますが、外国人の方は在留資格との関係から次のようになります。
なお、2025年時点における取得条件等で記載しています。
介護福祉士養成施設ルート
在留資格「留学」をもって日本国内の介護福祉士養成施設(専門学校、短期大学、大学など)で2年以上学び、
- 2026年度までの卒業者は、卒業後5年間続けて介護実務に携わると取得できます。
- 2027年度以降の卒業者は、介護福祉士国家試験に合格する必要があります。
なお、介護福祉士養成施設に入学するには、高等学校卒業以上の学歴が必要です(日本の高校と同等の学歴があればよい)。
また、介護福祉士養成施設ごとに日本語能力の要件が異なりますので確認が必要です。
福祉系高校ルート
在留資格「留学」をもって日本国内の福祉系高校に入学し、定められた科目を履修すると介護福祉士国家試験の受験資格が得られ、合格する。
実務経験ルート
- 在留資格「技能実習1号」から「技能実習3号」が修了するまでの間に、3年以上の実務経験を積み、実務者研修を修了して、介護福祉士試験に合格する。
- 在留資格「技能実習1号」の在留期間は1年、在留資格「技能実習2号」と「技能実習3号」の在留期間はそれぞれ2年です。通算して5年が最長となります。
- 在留資格「技能実習3号」を取得するには、一旦帰国(1ヶ月以上)しなければなりません。また、3級実技試験を受験する必要があります。
- 在留資格「技能実習1号」及び「技能実習2号」を修了した後、在留資格「特定技能1号」へ変更して、それまでの3年以上の実務経験と、実務者研修等を修了して、介護福祉士試験に合格する。
- 在留資格「技能実習2号」を修了すると、在留資格「特定技能1号」の要件である技能試験及び日本語能力試験が免除されます。
- 在留資格「技能実習1号」及び「技能実習2号」の終了時点で実務経験3年を満たしますので、在留資格「特定技能1号」の在留期間は更新しても通算5年までしか認められませんが、その5年の間に介護福祉士国家試験に合格すればよいことになります。
- 在留資格「特定技能2号」の特定産業分野に「介護」が存在しないので、介護で在留資格「特定技能2号」を取得することはできません。
- 在留資格「留学」をもって日本語学校に通い、技能試験及び日本語能力試験を受けて在留資格「特定技能1号」を取得、在留資格「特定技能1号」で3年以上の実務経験と実務者研修等を修了して、介護福祉士試験に合格する。
雇用先の要件
介護施設や事業所は、厚生労働省の基準を満たす必要があります。
雇用契約書に具体的な勤務内容、給与、労働条件が明記されていることが求められます。
在留期間
在留期間は、5年、3年、1年、または3ヶ月のいずれかで許可されますが、更新ができます。
また、更新回数に制限はありません。
更新には、引き続き介護業務に従事していることが必要です。
家族の帯同
配偶者や子供を在留資格「家族滞在」で日本に呼び寄せることが可能です。
(参考)在留資格「介護」と在留資格「特定技能1号(介護)」との違い
項目 | 在留資格「介護」 | 在留資格「特定技能1号(介護)」 |
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資格要件 | 介護福祉士国家資格が必要 | 国家資格は不要 技能試験と日本語試験の合格が必要 |
業務の制限 | 介護に関する業務内容に制限はない | 利用者への身体介護業務や機能訓練の補助などのみ可能 訪問系の介護サービスは対象外 |
在留期間の更新 | 期間更新の回数制限がないため長期滞在も可能 | 最長5年間まで |
家族帯同 | 可能 | 原則不可 |
永住申請の条件 | 比較的有利(安定した就労実績があれば可能) | ハードルが高い |