特定非営利活動法人(NPO法人)のメリット・デメリットと収入源・税金の基本を解説

「特定非営利活動法人(NPO法人)」について、設立を検討されている方や既に活動中の方に向けて、そのメリット・デメリット、収入源と税金の基礎知識をご紹介します。

目次

特定非営利活動法人(NPO法人)とは?

 特定非営利活動法人(NPO法人)とは、「特定非営利活動促進法(NPO法)」に基づいて設立される法人で、社会貢献活動を主目的とした非営利組織です。

 非営利といっても、収益活動が一切禁止されているわけではありません。収益は非営利活動もしくは収益活動の継続のために再投資する必要があり、収益を構成員へ分配はできない、というのが特徴です。

 ただし、構成員への必要な人件費を支出することは、収益の分配には当たりません。必要な経費だからです。なお、一般的な給料水準を超える人件費は分配に当たると判断されます。

特定非営利活動法人(NPO法人)設立のメリットとデメリット

設立のメリット

1. 法人格を得られる

 個人や任意団体と異なり、法人名義で契約・口座開設・助成金申請が可能になります。これにより信用力が向上します。

2. 設立費用が安い

株式会社のような登録免許税(15万円など)が不要で、登記費用を抑えられます(実費数万円程度)。

3. 社会的信用が高い

 「非営利で社会貢献を目的とした法人」として、行政や地域社会からの信頼を得やすいのも特徴です。

4. 税制優遇を受ける可能性がある

 認定NPO法人になれば、寄付者が税額控除を受けられるなどの優遇措置があります。

設立のデメリット

1. 活動範囲が限定される

 NPO法に定められた20分野の特定非営利活動に該当しないと設立できません。営利目的の事業は主目的にはできません。

2. 経理・報告義務が重い

 毎年、事業報告書・財務諸表を所轄庁に提出し、公開する必要があります。これを怠ると、行政処分の可能性もあります。

3. 理事・監事など役員の無報酬原則

 原則として役員に報酬は出せません(一部例外あり)。人材確保に影響することもあります。

特定非営利活動法人(NPO法人)の収入源:非営利活動と収益事業の違いとは?

 特定非営利活動法人(NPO法人)の活動には、非営利活動に基づく収入と、収益事業による収入の2種類があります。これらは税務上の取り扱いが異なるため、明確に区別する必要があります。

非営利活動による収入(課税対象外)

 以下のような収入は、特定非営利活動法人(NPO法人)の「本来の目的に沿った非営利活動」から得られるものであり、原則として法人税の課税対象にはなりません

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区分具体例備考
会費収入正会員・賛助会員からの年会費など対価性のないものに限る
寄付金個人・法人からの寄付自発的な無償提供が前提
助成金・補助金行政・財団等からの支援金条件付きの場合でも非課税
本来事業収入講座・イベント等で得られる参加費など(営利性がない場合)目的活動の一環と認められれば非課税

障がい者支援団体が主催する福祉講座の参加費 は、 非課税収入となる可能性が高い。

収益事業による収入(課税対象)

 一方、特定非営利活動法人(NPO法人)でも営利性がある事業を行うことは可能です。

 ただし、以下のような収入については、法人税法上の「収益事業」(34業種に該当)に当たると判断されると、課税対象になります。

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区分具体例課税区分
物品販売自主製品の販売、バザー等課税対象(卸売業・小売業)
飲食提供カフェ運営、模擬店など課税対象(飲食業)
講演・講師派遣有償での講師提供課税対象(請負業)
印刷・制作受託他団体からの業務受託課税対象(印刷業・広告業)

公益目的であっても、不特定多数を対象に反復継続的にサービスや物品を提供し、対価を得ている場合は、収益事業に該当します。

特定非営利活動法人(NPO法人)の法人税:収益事業の利益にのみ課税

 特定非営利活動法人(NPO法人)は「非営利型法人」として扱われますが、すべての活動が非課税になるわけではありません

 以下に法人税の仕組みを詳しく解説します。

課税対象は「収益事業から得られた所得」のみ

 特定非営利活動法人(NPO法人)が納める法人税は、以下のように限定的です。

項 目説 明
対象となる法人税法人税、法人住民税、法人事業税
課税対象収益事業から得た所得(営業利益)
非課税となる収入会費・寄付・補助金等の非営利収入、本来事業収入(営利性がないもの)

例えば、年間500万円の寄付金と100万円のバザー売上がある場合、寄付金は非課税バザーの利益のみが課税対象になります。

課税所得の計算方法

  1. 収益事業の総収入を集計
  2. 経費(人件費・仕入・会場費など)を差し引いて課税所得を算出
  3. 法人税率(一般的に年800万円以下の所得で15%)をかけて税額を計算

※地方税(法人住民税・事業税)も加算されるため、実効税率は20~25%前後になります。

節税対策や会計管理が重要

 収益事業が発生する場合は、非営利活動と明確に会計を分けて帳簿管理を行う必要があります。

 また、収益事業が拡大すると、税務調査の対象となる可能性もあります。

まとめ:NPO法人は「志」と「経営」のバランスが鍵

 特定非営利活動法人(NPO法人)は、社会課題に取り組む強い志を形にできる制度です。

 しかし、「非営利」だからといってお金が必要ないわけではなく、安定した収入源の確保や、法令順守が重要になります。

 そのため、特定非営利活動法人(NPO法人)の活動は社会貢献が主目的ですが、適正な会計処理と税務対応は必須です。

 非営利活動と収益事業の境界を正しく理解し、必要な税務申告を怠らないことが信頼につながります。

 設立・運営には専門的な知識も必要となるため、行政書士など専門家の支援を受けながら進めることをおすすめします。

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